MX480事例 さくらインターネット株式会社様

国内3拠点のバックボーン接続にMPLSを採用。
高品質で運用管理に優れた新ネットワークを実現。

  • 企業名さくらインターネット株式会社
  • 設立1996年
  • 所在地大阪府大阪市北区大深町
  • 事業概要自社運営のデータセンターでインターネットインフラサービスの提供
  • 取材対象技術本部 ネットワークグループ 部長 東 常行 氏(右)
    技術本部 ネットワークグループ 中西 太 氏(左)
    技術本部 ネットワークグループ 山口 勝司 氏(中央)

さくらインターネットでは、東京・大阪・石狩の拠点間接続を100G化する計画に合わせてMPLS の採用を決定。運用負荷を軽減しつつ、高品質・高度なバックボーンネットワークの実現を目指しました。その中核を担うルーターとして、ジュニパーネットワークスのMX480が選ばれました。この度、MPLS の採用の背景やMX480 の選定に関する詳細を、東部長率いるバックボーンネットワーク管轄部署の中西氏と山口氏よりお話しいただきました。

● 目的

安定・高速かつLayer2フラットな接続を提供するエリア間ネットワークの構築。

● 導入のポイント

従来のネットワーク設計を見直し、MPLS上でBGPを稼働させる階層構造を選択。ルーターとしてデータセンターネットワークに実績のあるジュニパーネットワークスMX480を採用。

● 導入後の効果

通信断の極小化、ならびにレイテンシ減少を実現。運用チームの負荷軽減にも大きく貢献。

さくらインターネットの紹介

さくらインターネットのサービスや取り組みについて教えてください。

当社は1996年の創業以来、高品質で手軽なインターネットインフラサービスを提供することを目指して、自社運営のデータセンターを中核に事業を展開しています。国内最大規模の大容量・高速なバックボーンネットワークを構成し、東京・大阪・石狩の3拠点から堅固かつ快適なサービスを提供しています。

レンタルサーバやVPS、各種クラウドサービスのほか、物理サーバを占有できる「専用サーバ」も人気の高いサービスです。

また最近では、AI/機械学習向けに大量の計算資源を圧倒的なコストパフォーマンスで利用できる「高火力コンピューティング」、IoTプラットフォームサービス「sakura.io」やIoT/M2M向けSIMサービス「さくらのセキュアモバイルコネクト」、日本初のクラウド上で衛星データの分析ができる衛星データプラットフォーム「Tellus」など、データセンター事業で培ってきた経験や実績を生かし、時代の流れに合わせてお客様のビジネスに貢献できる新たなインターネットサービスの開発に取り組んでいます。

ネットワーク更改の背景

バックボーンネットワークを刷新したのはなぜですか。

これまで東京・大阪・石狩をつなぐバックボーンネットワークは、拠点間のボーダールーターを直接専用線で接続し、BGPで経路交換をしていましたが以下のような問題を抱えていました。

● BGP接続のため、専用線に障害が発生すると経路の変動によって膨大なルーティングテーブルの書き換え処理が行われ、一時的に通信状況が不安定になる。

● 大阪・石狩は東京を中継して接続しているので、災害などで東京への回線がすべて遮断すると混雑が発生するリスクがある。

● 複数エリアでのサービス展開、サービス多様化を踏まえ、エリアを跨いだLayer2接続に対応していく必要がある。

「メンテナンスなどの際、運用チームの負荷の軽減に大きく貢献することができました」
さくらインターネット株式会社
技術本部 ネットワークグループ
中西 太 氏

これらの課題を解決し、より柔軟で高度なニーズへ応えたいという思いがありました。

そこで、今まで直接の接続が無かった大阪~石狩間の100Gbpsネットワークの新規構築にあわせて、単純に回線の増強を行うだけでなく、東京・大阪・石狩の3エリア間の接続にMPLSを選択することとしました。さらに、MPLS上で従来のBGPを稼働させる階層型ネットワーク構成とすることにより、これまでBGP環境で発生していた課題を吸収し、かつL2閉域網を効率的に利用できることを目指しました。

技術や製品の選定ポイントについて教えてください。

新バックボーンネットワークへMPLSを導入するにあたり、既存ネットワークからの変更が少ないこと、シンプルな構成にできること、今後の拡張が容易であること、運用負荷を軽減できることを基準に製品選定を行いました。

もともと私たちは、バックボーンのMPLS化を以前から検討していました。しかし予算とコストがマッチせず、見送りを続けていました。今回、MPLSに対応したルーターの価格がこなれてきたことをきっかけに、拠点間の100Gbps化に合わせてMPLS化に踏み切ることができました。

MX480の選定理由は、やはり実績です。これまで当社では、複数種類のジュニパー製品を導入してきましたが、いずれも故障率が圧倒的に低い点が印象的でした。導入実績が豊富で、通信事業者の事例が多いこともあり、安心して導入することができました

導入のメリット

新バックボーンネットワークの効果について教えてください。

今回は、まず東京・北海道間をMPLS化したのち、東京-大阪間、大阪-北海道間のMPLS化を実施しました。既存の専用線サービスや機器構成は大きく変更せず、MPLSをオーバーレイする構成を採りました。いずれも大きなトラブルなく安定的に稼働しています。

まず運用面では、キャリアのサービス停止(回線借用)などへの対処が大変容易になりました。以前はオペレーターが煩雑な作業を行っていましたが、今ではスムーズに回線を切り替えることができます。

サービス面では、3拠点のハイブリッド構成を容易に提供できるようになり、可用性や柔軟性が大幅に向上したことが大きな効果だと考えています。

とりわけ、MPLSの採用によってL2閉域網を多数利用できるようになったことが大きなメリットであると感じています。従来はインターネットを利用するために、機材の設置やチューニングなどに長時間を要していましたが、現在は拠点間接続を意識することもなく、DR/BCPなどのサービスを短期間で提供できるのがポイントです。

「エリア間の回線に障害が発生した際の通信影響を極小化することができました」
さくらインターネット株式会社
技術本部 ネットワークグループ
山口 勝司 氏

双日テックイノベーションのサポートをどのように評価していますか。

双日テックイノベーションは、これまでも多数の製品を提供していただいており、定期的なテレビ会議などを通じて手厚いサービスを実施してくれる点で助かっています。

MPLS化の計画も長期にわたり相談に乗ってくださり、今回のタイミングでも取り組みやすい体制をすばやく整えていただきました。

MX480の知識やキャリアネットワークの経験も豊富で、特に評価段階では、細かな検証を効率よく実施していただきました。

新しいプロトコルにチャレンジでき、現在も安定的に稼働しているのは、双日テックイノベーションとジュニパーネットワークスの総合力によるものだと実感しています。

今後の展望

今後の取り組みについて教えてください。

まずMX480を活用して、自動復旧などの機能を強化し、安定性をさらに向上したいと考えています。また運用面でも、オペレーションの自動化やワークフローの整理などを進めて、管理負荷の軽減を目指したいです。

ネットワークが刷新されたことにより、よりさまざまなニーズに応えられるサービスを提案・提供できるものと考えています。

双日テックイノベーションには、これまでと同様に、ジュニパーネットワークスの製品に限らず一元的・総合的なサービスを提供し続けていただきたいです。ハードウエア、ソフトウエア、プロトコルなど最先端の技術を追求し、ニーズの変化に合わせた新しい提案にも期待しています。