ウィズ・アフターコロナ環境とネットワークトラフィック
※本記事は「新型コロナウイルス肺炎」に影響を受けた、企業のリモートワーク環境等が与えるネットワークトラフィックを考察したブログとなりますが、「新型コロナウイルス肺炎」の医療的知見や対応策等を示唆するものではございません。
目次
ウィズコロナ、アフター(ポスト)・コロナ
新型コロナウイルス肺炎の世界的大流行に端を発した、ロックダウン(外出自粛)による大きな変化の中で、皆様はどのような生活環境、ビジネス環境の変化があったでしょうか?
当記事執筆時点では、感染拡大は一時期のピークを過ぎて、諸外国とともに日本についても緊急事態宣言の終了について諮問会議が開かれ、徐々に具体的な自治体ごとの解除基準の設定及び、第二波・第三波が予想されるため、それにたいしてどのような施策が打てるのか、国を上げて出口戦略や拡大防止戦略など、生存に向けた戦略づくりが進んでいる状況です。
日々、刻一刻と状況が変わっていく中で、政府や各自治体からの「リモートワーク要請」の中、対応が進む企業から、一方でリモートワークができない業種・職種もあり、学校などの休校に伴い子供の面倒をどう見るのかなど、社会全体の問題として様々な課題が浮き彫りになってきていることと思われます。
新聞、テレビ、ネットなど、コロナに関する言説がメディアを賑わせる毎日ですが、「ウィズコロナ」、「アフター(ポスト)コロナ」それぞれの先を考えたい、考えなければならない中で、まずはそれらのウィズ、アフターといったコトバの定義がメディアにより異なる状況ですので、こちらに整理してみます。
ビフォアコロナ
一連のコロナウイルス騒動の前においても、毎年のようにインフルエンザウイルスや、ノロウイルス、ロタウイルスなど、ウイルス感染症が流行というニュースは絶えませんでした。
そのような中で私達も自己防衛という意味も含め、マスクの利用や、アルコールによる除菌等を生活の中で行っていました。一方でそれらの対応が不十分であったために、感染症が局地的に流行(コロナウイルスによりクラスター感染という言葉が一般認知されるようになりました)し、学級閉鎖や、飲食店の営業自粛と言った対応を取らざるを得ない状況でした。
アゲインストコロナ
2020年5月現在の状況です。
自粛生活により徐々に新規感染者数の増加も減少傾向にありますが、一方で社会経済に与える影響が目に見えてきた状況となっている状況です。
ウィズコロナ
現実的に目の前にある未来であると言えます。
新型コロナウイルスの新規感染者数及び死亡者数の増加傾向についてはある程度落ち着いたものの、世界各国の研究者がたが日夜研究を急ピッチで進められている、決定的な治療薬および治療法、予防法の確立が未完成の状況であるため、今後引き続き「どのようにしてコロナウイルスがある状況で、生活、経済を回転させていくのか」を考えていくことがウィズコロナの言説となります。
本稿では主に、このポイントについて中心に意識しながら進めていきます。
アフターコロナ、ポストコロナ
コロナウイルスの脅威が終息した後にどのようにあるべきかを論じるものです。
経済的な影響だけでなく、公衆衛生の観点において、治療薬・治療方法の確立されていない感染症が流行してしまう危険性認識の上で、どのように私達が経済活動、日常生活を送っていくことができるのだろうかという点に注目するものです。
コロナ以外の点に着目する意味合いでは、言及・言説を出すにはふさわしいものではないと考え、今回のテーマではないものとします。
新たな環境をどのように捉え、適応し、私達が生活を維持・向上していくことができるのか?
コロナウイルス肺炎が私達のビジネスや生活に与えた影響とは?
その中でネットワークが果たしている重要性と、当社が取り扱いしているJuniper製品がどのようなポイントにおいて活用されているのかを、このブログでは整理したいと思います。
企業のリモートワーク体制と環境整備
旧来、震災などの影響を受けて検討されてきたリモートワーク体制は以下3つが主流となっていました。>
1)モバイルPCを自宅に持ち帰り、自社サーバ・サービスへVPN接続
2)リモートデスクトップ接続した会社設置のPCから業務システムへアクセス
3)VDI環境が整備されており、PC端末自体は何でも良い。VDI環境は自社DC内でサーバへインターコネクト
そこに対して、近年はSaaSの台頭、パブリッククラウドへの基幹・業務サービスの移行などが流行した結果、企業における「個々人のデスクトップ環境からのアクセス先」が自社DCのみならず、クラウドその他外部のどこにアクセスしているのかを把握しづらい状況となっています。
企業の情報システム部門としてはそれに対して、貸与PCへログ管理ソリューションを導入する対応や、VDIの検討などを進めてきたのが、この数年更に「ワークスタイル変革」「働き方改革」というテーマの中でやっとIT投資が進んできたか、あるいはその検討に入った、という状況が多いのではないでしょうか?
また、今回の新型コロナウイルス対策に対応した自粛生活環境において重要なポイントとしては、2020年5月4日 専門社会議より提言された「新しい生活様式」が重要となりました。
そのうち、提言のなかで、リモートワーク体制・環境に言及されているのは「(4)働き方の新しいスタイル」についての項です。
(1)一人ひとりの基本的感染対策
(2)日常生活を営む上での基本的生活様式
(3)日常生活の各場面別の生活様式
(4)働き方の新しいスタイル
- テレワークやローテーション勤務
- 時差通勤でゆったりと
- オフィスはひろびろと
- 会議はオンライン
- 名刺交換はオンライン
- 対面での打ち合わせは換気とマスク
それに対し、完全に対応し難い状況と表出した課題が業界別に出てきたのが、今回キーワードとなっていた「人の流動の8割削減」でした。
製造:日本の製造業においては、その製造工程から管理、流通工程まで「人」が「モノ」を動かすため、そもそもリモートワークが難しい環境でした。
小売:小売業はその店頭販売を中心とし、また日常生活を営む上で必要な業種でしたため、よほどの場合を除いて、出勤して業務継続をしなければならない環境でした。
流通:今回、国内の自粛生活を支えた最もたいせつな業種ですが、全てヒトが運び、動かす業界のため、働き方そのものを変えるには難しい環境でした。
一方で、一般生活において、全国の学校が閉鎖となり、そのような業態の中でも「子供たち」をどうするのか、など、これまで「ビジネス」「プライベート」として明確に分離されていたものが、渾然一体としてしまった結果、一種世界規模で「働き方とは何か」「ビジネスとはなにか」を突如急いで考えなければならないという状態になったと言えます。
逆説的に言えば、その他業種・職種において、特にホワイトワーカーのビジネスモデルはリモート対応が進んでいくこととなりました。
・主に書類関連の捺印業務を除き、電子化が進んでいた企業においてはほぼフルリモートでの業務となりました。
・当社でもビデオ会議システム「Zoom」を取り扱っておりますが、会議はリモートで執り行われるようになってきました。
増えるネットワークトラフィック
当社でも取り扱いをしているビデオ会議サービス「Zoom」は、2020年4月22日の時点で1日あたり約3億人以上がビデオ会議の参加者となる巨大なプラットフォームになったとニュースにもなりましたが、VDIでもVPNアクセスであっても、自宅~会社、あるいは自宅~データセンター、自宅~クラウドサービスといったネットワークトラフィックが、本来会社に出勤することで、これまで社内LANでやり取りされていたデータがインターネット全体に負荷としてのしかかっており、ホワイトワーカーがStay Homeによる自粛の中でビジネスを行おうとすればするほど、ネットワークそのものの重要性が高まり、一方で障害や遅延などトラブルも急増している状況です。
そもそも、旧来のBCP対策においては東京–大阪、あるいは東京–沖縄、東京–北海道など遠隔地にサーバを設置するなどして、人的資源についても「該当災害地においての業務継続が難しい場合代替する」手段をのみ追求している場合がありました。
■例えばVDIでは自宅~データセンター間において1人あたり1日/1ヶ月どれだけのトラフィックがあるでしょうか。
必要帯域情報から凡その通信データ量を割り出してみます。
VDIに必要な帯域はVMWareのPCoIPにおいても、Citrix ICAにおいても、どちらも画面転送において快適にアクセスできる必要帯域は、150~200kbpsあたりがベストプラクティスとして設計されています。
ただしベストプラクティスの前提が(1024×768解像度の場合)と設定されておりますので、 近年デュアルモニタや、今回のリモートワークで「VDI上でウェブ会議などを行うこと」を想定すると、その倍、およそ400kbps程度を従業員個々人のアクセスに必要な必要帯域とすることが妥当と思われます。
・VDIによる通信データ量 400kbpsから算出し、1分3MB 1時間あたり180MB
1時間180MBとなると1日8時間利用で1.44GB(!)
今回、急遽のリモートワークで、自宅に固定回線がなく会社貸与のルータ(7GB制限)を利用してVDIワークをされた方は、5日ほどフルワークを行うと、いわゆるパケ死となってしまった方がおられるのではないでしょうか。
※実際フルで画面を動かし続けるなどは無いかと思いますので、10日前後で悲鳴を上げる状況があったかもしれません。
■例えばZoom等のビデオ会議では自宅~Zoom間でどれだけのトラフィックがあるでしょうか。
必要帯域情報から凡その通信データ量を割り出してみます。
- WebExビデオ会議 1分12MB 1時間あたり675MB
- Skypeビデオ会議 1分36MB 1時間2160MB
- Zoomビデオ会議 1分5MB 1時間あたり300MB
- YouTube動画(1080pフルHD) 1分60MB 1時間あたり3600MB
■リモートワーク体制により増加したトラフィック
もちろんVDIとZoomだけで仕事が成り立つとは思いませんが、国内労働者のうちホワイトカラーが約3000万人、(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/s0929-7b.html)、うち今回のテレワーク実施率を、アンケート結果を反映し約15%と(https://toyokeizai.net/articles/-/342092?page=2)すると、450万人がリモートワークによるネットワークトラフィックを生み出している状況と推察できます。
450万人が一斉にリモートワークにより、一日8時間上記のツールを使い続けたらどうなるでしょう。
仮にVDIにはVMwareを、ビデオ会議にはZoomを利用したとして、
450万人 x (180+300)MBx8時間 = 17,280,000,000MB=17.28ペタバイト
ものデータが新たに自宅からデータセンター、あるいはクラウドサービスへと飛び交うことになるのです。
その他、子供のオンライン授業や、様々な事柄が「オンライン」というネットワークを活用したサービスによって、この自粛生活を乗り切るために、ネットワーク、インターネットが果たしている重要性はますます上がっているという状況です。
今後、ビジネスモデルが変革を遂げていくにあたり、リモートワーカーの数が更に増加していくと想定すると、トラフィックそのものの増加も含め、各社のコーポレート、あるいはデータセンターだけでなく、従業員個々人の自宅から飛び交うネットワークを考慮していかなくてはならないのではないでしょうか。
ネットワークトラフィックを効率的に運用、冗長化し、高可用性を高めるJuniper
Juniperはパブリッククラウド利用、データセンター及び企業そして在宅勤務のネットワークインフラを支えるために以下のような領域をカバーしています。
パブリッククラウド利用
・vSRX 仮想ファイアウォール
・Contrail Insight(旧称:AppFormix)
・個人所有ライセンス(BYOL)オプションと従量制(PAYG)オプション
主にパブリッククラウド利用においては、Junos OSがネットワークのどの場所でも同じように機能し、運用できることや、
リアルタイム分析により、あらゆる場所でアプリケーションとネットワーク機能のパフォーマンスを目標のSLA レベルに保ち、
セキュリティ体制やネットワーク サービス レベルに妥協せずに、パブリック クラウド サービスの拡張性、コスト、サービス開始までの期間の短縮などのメリットを活かすなど、様々なポイントにおいてJuniperが活用されています。
データセンター
・Contrail Enterprise Multicloud
・QFX シリーズ スイッチ
・SRX シリーズ ファイアウォール
・MX シリーズ ルーター
主にデータセンターでのネットワークを支えるためのキーワードは「マルチクラウド対応ファブリック」と「自動化によるNetOps」です。
急増するトラフィックにおいて重要なさまざまなインフラストラクチャ、ワークロード タイプ、テクノロジにわたるオーバーレイ/アンダーレイ接続、運用、自動化、インサイト統合をコントロールする技術が、日々のデータセンターの運用を支え、高品質な通信の担保を行います。
企業
・SRXシリーズ サービス ゲートウェイ
・MX シリーズ 5G ユニバーサル ルーティング プラットフォーム
・EX / QFXシリーズ スイッチ
・Contrail
主に企業におけるネットワークを支えるためのキーワードは「Virtual Chassis」と「One Architecture / One OS」。
急増するトラフィックにおいて、Juniper主要製品に搭載されているJunos OSにおける様々な技術が、日々の企業ネットワークの運用を支え、高品質な通信の担保を行います。
在宅勤務
・Mistプラットフォーム
リモートワーカー(自宅で仕事をする従業員)が急増するなか、Juniper Mist の AI ドリブン エンタープライズがその効率性を向上します。
自宅およびリモート オフィスにおけるユーザー エクスペリエンスに AI ドリブン インサイトを活用し、Marvis Dynamic Virtual Assistant および動的パケット キャプチャを使って、どこからでも、問題が発生する前にトラブルシューティングを行うことで、分散型企業環境を担保します。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
新型コロナウイルス感染症を発端とした未曾有のビジネス環境の変化に対して、私達は様々なICT技術を駆使しながらも、経済活動を止めずに、社会をどう動かしていくのかを考えていかなければならない時が、現実に目の前に突如立ちはだかってしまいました。
そのような中で、新たな「現代のビジネスモデル」を支えるためのネットワークインフラストラクチャとしてJuniperは様々な答えを用意しております。
日商エレクトロニクスは、20年来のJuniperとのビジネス関係性のなかで、クライアントにあわせ機器を選定し、提案する目利き力・提案力、選定した機器を環境構築する技術力を磨きあげた、国内随一のパートナーでございます。