【第五回】AIを活用!Marvisによるトラブルシューティング手法

エンジニアblog

1.Mist Marvisとは

Mist MarvisはMistにおける仮想ネットワークアシスタント機能を司るAIプラットフォームです。MarvisはMistで管理しているアクセスポイントやスイッチが収集したメトリクス(電波情報や通過するパケットの情報、クライアント通信のRTTなど)をもとに分析を行い、問題の特定、プロアクティブなトラブルシューティングができます。
Marvisが持つ各機能についての機能概要、メリット、効果を紹介させていただきます。

※Mist Marvisはネットワーク問題の特定が可能ですが、軽微な電波調整やチャネル変更以外の複雑な問題に対して自動的に対処する機能は備えていません。

2.Marvis Action

Marvis Actionは、AIドリブンで動作するプロアクティブなトラブルシューティング機能です。AIを活用してネットワーク上の問題を常に分析し、問題の発生事象、影響を受ける対象、および問題解決のための具体的な対処方法を運用者に自動的に提示します。

エンタープライズネットワークの運用において、従来は以下のような課題がありました。

  • ユーザー報告を契機に事後的なトラブルシューティングを開始
  • 問題が報告されるまで障害の存在を認識できない
  • 問題解決までの時間が長くなる傾向

メリット

Marvis Actionを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 予防的な問題検出: ユーザーが問題を報告する前に、AIが自動的に異常を検知
  • 影響範囲の可視化: 問題の影響範囲や対象を明確に特定
  • 対処方法の提案: 検出された問題に対する具体的な解決策を提示
  • 迅速な問題解決: 早期発見・対応により、ダウンタイムやサービス低下を最小化

    期待される効果

    Marvis Actionを導入することで期待される効果は以下の通りです。

    • 断続的な接続問題の自動検出と根本原因の特定
    • 問題の表面化がされづらい電波に関する問題の検出と影響の特定
    • 特定のアクセスポイントやスイッチのパフォーマンス低下の早期発見

    Marvis Actionは、AIを活用した次世代のネットワーク運用を実現し、運用者の負担軽減と同時にエンドユーザーの体験向上を可能にします。

    発生している問題の件数及び問題の分類がされる。 分類された問題をさらに小項目で表示

    発生した問題、場所、影響、時間、対処すべき推奨アクションを表示


    3.対話型アシスタント(Conversation Assistant)

    自然言語を使用してMarvisで検出されたネットワークの問題に対して、トラブルシューティングに役に立つ情報の提供を行うことができる機能です。さながらもう一人のエンジニアに対して質問し、リアルタイムに応答しながら運用者のサポートをするペアオペレーションのような機能です。

    従来のトラブルシューティングプロセスでは、以下のような課題がありました。

    • ユーザーからの報告を契機に、運用者が自ら必要な情報を収集する必要がある
    • 必要な情報にたどり着くために、GUIの操作方法を習得する必要がある
    • 複数の画面を同時に開き、情報を関連付けながら分析しなければならない
    • 問題の原因特定や解決策の提案に時間を要する

    メリット

    この対話型アシスタント機能を活用することで、以下のようなメリットが得られます。

    • 自然言語対応:自然言語で問い合わせることでGUIの操作を行うことなくトラブルシューティングが可能
    • 対応策の提案:推奨される対処方法の提案とメーカドキュメント・マニュアルの提示

    期待される効果

    対話型アシスタントを導入することで期待される効果は以下の通りです。

    • 即座にトラブルシューティングが可能になり、短時間で問題の特定と対処が実現
    • GUI操作による反復的な調査作業が削減され、運用者のオペレーション負荷を軽減。
    • 通常オペレーションに役に立つ適切なドキュメントの検索

    ただし、現在の実装では問い合わせ言語は英語のみで、日本語は未対応となっています。またチャット形式で問い合わせをする際に意図したとおりの結果を出すには、「unhappy user」や「troubleshoot <device_name>」のようなクエリのような問い合わせを行う必要があります。今後は日本語対応や複雑な問い合わせに対して回答できるような実装に期待したいです。

    チャットボックス表示 Marvis AIが接続状況が悪いと判断したユーザ・クライアントを表示
    デバイス名を選択し、特定のデバイスで発生した問題を表示 発生した問題の詳しい状況を表示
    対処法の表示やInsightページへの誘導 影響を受けていた箇所(SSID)を表示

    4.Marvis Query

    Marvis Queryは、アクセスポイントやスイッチが収集した膨大なメトリクスデータに対して、簡単なクエリを投げかけるだけで、ユーザーにとって見やすい表示やサマリとしてまとめてくれる強力な分析機能です。このツールにより、複雑なデータ収集・分析作業が大幅に簡素化されます。

    従来のネットワーク運用では、以下のような課題がありました。

    • 定期的なレポート作成(例:1週間で接続したユーザーの一覧や通信量の集計)に多大な時間が必要
    • 必要な情報を個々に収集し、手動でまとめる作業が発生
    • データ収集と整理に多くの工数を費やすため、分析や改善活動に時間を割けない
    • レポート作成が運用業務における大きなコスト

    メリット

    Marvis Queryを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

    • データ収集の自動化: クエリ一つで必要なデータを自動的に収集
    • 柔軟な期間設定: 最大30日間のメトリクス情報を自由に分析可能
    • 可視化の簡素化: 複雑なデータも見やすいフォーマットで表示
    • 運用業務の効率化: レポート作成時間の大幅な削減による生産性向上

      期待される効果

      Marvis Queryを導入することで期待される効果は以下の通りです。

      • 求めに応じた必要なデータの集計の迅速なレポートの発行
      • 読みやすくサマリー化されたネットワーク統計データの可視化

      ネットワーク運用においてデータ駆動型の意思決定を促進し、より戦略的な運用活動に注力するための強力なツールとして、Marvis Queryは大きな価値を提供します。Marvis Queryはクエリ言語の入力候補が自動的に出力されるため、クエリ言語自体を覚える必要がなく簡単に使用することができます。

      サジェストによりクエリを学習が不要 次に入力できるワードをさらに表示
      24時間以内に接続されたクライアントリストの表示 7日間で接続されたクライアントリストの表示
      7日間で接続属されたクライアントの数 7日間で通信されたアプリケーションの通信量とランキングの表示


      5.Marvis Minis

      Marvis Minisはネットワークデジタルツインを実現する機能です。この機能は各アクセスポイントが自律的にクライアント通信(DHCP、ARP、DNS、ICMP)をシミュレーションし、ネットワークの接続性とサービスの到達性を継続的かつ自動的に評価することが可能になります。

      従来の無線ネットワーク環境では、以下のような運用課題がありました。

      • ネットワーク構築時や問題解消時には、実際にクライアントがアクセスポイント(AP)に接続し、通信が正常に行えるかを手動で確認する必要
      • ネットワーク構築直後において各アクセスポイントの通信状態を確認に多大な工数と時間を要する
      • 深夜帯など利用者が少ない時間帯に発生した問題は、翌日に問題が発生するまで発見できないケースが多かった

        メリット

        Marvis Minisを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

        • 予防的ネットワーク管理: ユーザーが存在しない深夜帯でも問題を即時検知可能
        • 潜在的影響の特定:実際のユーザーが影響を受ける前に、潜在的なネットワークの問題を可視化
        • 運用効率の向上: 手動テストの必要性が大幅に減少し、IT担当者の負担を軽減

        期待される効果

        Marvis Minisを導入することで期待される効果は以下の通りです。

        • 深夜リモート作業におけるネットワーク設定変更後のクライアント疎通確認コストの軽減
        • アクセスポイントバージョンアップ後のクライアント疎通確認からの解放

        Marvis Minisは、IT管理者の「目に見えない問題を可視化する力」となり、より安定した、信頼性の高いネットワーク環境の実現します。

        サイトごとの検証結果サマリ表示 実施した検証結果の表示

        特定サイト宛ての通信の速度と遅延計測(WANエッジ利用時のみ)

        6.おわりに

        Mist Marvis AIを使用した4つの機能についてご紹介させていただきました。他社の製品にはあまりない特徴的な機能となっています。日々ネットワークの運用を行っている運用者にとって運用業務を楽にする機能が豊富に備わっており、人材不足や業務効率化の一助となる機能になります。
         
        ”MistのAI機能を詳細に解説してほしい”、“個別で詳しい話を聞きたい”、“デモをしてほしい”といったご要望がございましたら、遠慮なく弊社までお問い合わせください。

        以上

        Juniper Mist製品ラインナップはこちら⇒ Juniper Mist | Junipedia (juniper-ne.jp)

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