EX9200事例 株式会社IDCフロンティア様
オンプレミスとクラウドをシームレスに接続できるネットワークサービスを提供するために、VPLS によるL2 延伸を実現しました。
- 企業名株式会社IDCフロンティア
- 設立2009年2月
- 所在地東京都新宿区四谷4-29
- 事業概要クラウドコンピューティング事業 、データセンター事業
- 取材対象株式会社IDC フロンティア
カスタマーサービス本部 プラットフォームエンジニアリング部 部長 梅田 聡 氏(中央)
カスタマーサービス本部 プラットフォームエンジニアリング部 ネットワークグループ ソリューションアーキテクト 三浦 尊 氏(右)
技術開発本部 UX開発部 アーキテクトグループ 井上 一清 氏(左)
株式会社IDCフロンティア(以下、IDCフロンティア)では、ジュニパーネットワークス(以下、ジュニパー)のイーサネット・スイッチ EX9200シリーズ(以下、EX9200)を利用して、自社保有の首都圏、東日本、西日本のデータセンターをVPLSで接続。企業のITインフラをフラットなL2ネットワークで接続できる環境を実現した。EX9200 導入の経緯とねらいについて伺った。
ITインフラパートナーとして事業を展開するIDCフロンティア
IDCフロンティアの事業概要について教えてください。
IDC フロンティアは、Yahoo! JAPAN グループの戦略ITインフラ事業者として、お客様サーバーを収容するデータセンターサービスや、IDCフロンティア独自にサーバー/ ストレージを所有し提供しているクラウドサービスを中心としたお客様のITインフラパートナーとして進化してきました。
全国9カ所という国内最大級のデータセンターを運用しており、近年はビッグデータやIoTといった時代の先駆者となるべく、データ分析プラットフォームを展開するなど、常に新しい挑戦にも取り組んでいます。
ハイブリットクラウドのニーズに向けてEX9200 を導入
今回、EX9200で構築したネットワークの概要を教えてください。
首都圏(東京都)、東日本(福島県白河市)、西日本(福岡県北九州市)で運営する3 つの大規模データセンター間をVPLS 接続するためにEX9200 を導入しました。
近年、企業におけるクラウドサービスの利用が進み、複数拠点に分散されたクラウドサービス間、ホスティング・クラウド間の接続と自由な構成へのニーズや、ITインフラ基盤の効率的な利用方法などさまざまな課題がありました。
もちろんこれまでも広域イーサネットサービスなどを利用して接続することは可能でしたが、既存の技術によるサービス提供は割高で、ネットワーク構成も複雑になりがちです。そのため、よりお客様のニーズに応えられることができるようにフラットかつシームレスに、低コストで接続サービスをご利用いただく新たな接続環境を構築しました。
IDCフロンティアでは、サービスがネットワークに依存することなく、必要なときに適切なリソースを柔軟に調達できる「One Network」構想をコンセプトにネットワークサービスを展開していきます。
VPLSを採用した理由について教えてください。
何より重視したのは安定性でした。当時はSDNも流行していて検証をしましたが、まだ技術的に確立されていない部分も多々あり、安定性や信頼性という面ではデータセンター間接続に利用するのにはリスクが高いと判断しました。私たちが本当に大切にしていることはユーザーへの安定したネットワークの提供と信頼性です。実績があり、言わば「枯れた」技術であるVPLS を利用することで、安定的でパフォーマンスのよいサービスが提供できると判断し、採用を決めました。
ネットワークはつなげようと思えば力技でつなげることが可能です。今までオンプレミスありきの考え方でデータセンター間を点と点でつなげていましたが、私たちの目指す「One Network」構想は、全国のデータセンターとクラウド、ユーザー間を「面」でつなげるものであり、手作業では今後の運用に制限が出てきます。将来性を見据えたときにジュニパー製品の技術が役に立つと考えました。
EX9200の信頼性や拡張性、パフォーマンスを評価
製品を選定したときの要件があれば教えてください。
安定性は一番の要件ですが、機能面ではユーザー側に対して複数のVLANを割り当てるので、できるだけ多くのVLANをサポートできること。また、さまざまなVLAN IDを柔軟に収容できる機能に対応していることも選定の要件でした。
EX9200を採用した理由を教えてください。
IDCフロンティアでは、これまでも数多くのジュニパー製品を導入してきましたが、どの製品もトラブルが限りなく少なく、ジュニパー製品への信頼は確固たるものがありました。
EX9200 であればVPLSはもちろんのこと、ブリッジドメイン機能により最小限の設定でサービス単位のブロードキャストドメインを提供できます。柔軟にVLAN ID を変換し、ニーズに応じた柔軟なサービス提供が可能です。
その他にも、メーカーで独自開発しているASIC が搭載され、将来のパフォーマンスや各種機能への拡張性と柔軟性に期待ができます。それらは検証を重ねる中で、高いパフォーマンスや安定したサービスが提供できると考えられ、採用する判断材料となりました。
また、ジュニパー製品共通のJunos® OSが採用されていることも運用上のメリットとなると考えました。他のジュニパー製品とオペレーションを統一できるので経験とノウハウを生かして運用負荷を抑えることができます。当然のことですが、サービス提供事業者として作業リスクは極力下げる必要があります。その点、Junos® OSであればコンフィグを入力してもコミットコマンドを入力しなければ設定の反映がされず、作業時に万が一トラブルが発生したとしても、すぐにロールバック機能により世代管理されたコンフィグを読み込むことができます。運用をする上でリスクを低減する非常に優れた機能だと感じています。
入念に機器の設定やトラブル発生時の対応を検証
EX9200の導入効果と評価をお聞かせください。
機器は安定稼働しており、意図しない再起動などといった不調は一度もありません。運用面の導入効果としては、以前のようにサービス要求に応じてケーブルの抜き差しなど物理作業を行わずとも迅速にネットワークを柔軟に構築できるようになりました。
また、VPLSの場合はL2 ループによる各種ストームの発生が懸念される問題となりますが、ブリッジドメイン単位でストームの制限を掛けられる点などは非常に優れていると感じます。
導入時に苦労したことなどはありましたか。
フラットなネットワークとして自由に利用してもらえる反面、悪影響を及ぼすような設定や使い方がされるケースも想定しなければなりません。そのため、導入設定やトラブル発生時の対応シミュレーションには半年ほどの時間を費やして、徹底的に確認と検証を行いました。
正直、簡単な作業ではありませんでしたが、双日テックイノベーションが本番環境と同等の理想的な検証環境を用意してサポートしてくれたので、無事にサービス環境へ実装することができました。自社だけではこれだけの検証環境を用意することは非常に難しかったでしょう。
双日テックイノベーションへの評価と期待
双日テックイノベーションへの評価をお聞かせください。
いつもレスポンスが速く、正確な情報を提供してくれましたので、とても助かりました。ジュニパー製品に関する知識も非常に豊富で、今回も安心して導入・検証作業を進めることもできました。
双日テックイノベーションのサポートがなければ、今回のVPLSの実装は、実現しなかったといっても過言ではありません。
最後に、双日テックイノベーションへの期待をお聞かせください。
IDCフロンティアでは、今後もネットワーク基盤の強化を図り、バックボーンの増強やサービスの効率化を進めていきたいと考えています。その一つとして、IDCFクラウドのユーザーが簡単に東西のリージョン間を、閉域網を用いてわずか1分で接続できる機能を、「プライベートコネクト」サービスに2016年2月に追加しました。今後も「OneNetwork」構想を元に、ユーザーがシンプルかつシームレスに安定して使えるサービスを検討していきます。
実績のある機器や技術でも、いざサービスの本番環境に実装するとなると、もちろん単に接続すればいいというわけではありません。可能な限りリスクヘッジを図りながら、導入・運用の最適化を進めていくことが重要となってきます。
しかし、それらをすべて自社のみでカバーすることは非常に大きな負荷となります。双日テックイノベーションの存在は、ネットワークインフラを構築・運営して行く上でいまや不可欠な存在です。今後も引き続き、技術レベルの高いサポートと迅速な対応に期待しています。
※記載の担当部署は、2016 年4 月の組織名です。